Lies and Logical | codomo

Lies and Logical

「鼻行類」という本がある。鼻で歩く奇妙な生物を記述した本だ。その生物の性質、生き方や解剖図まで事細かに書いてある。ところが、この生物は実在していない。実在しない動物をあたかもいるように考え示した本。ハラルト・シュテュンプケというドイツ人が書いた、いわば理論生物学といえる本である。動物行動学者の日高敏高さんはこの本を日本語訳した。真に受けた学生や大学教授もずいぶんいた。そういう結果になることを分かっていて、なぜあなたは研究者としてしたのか。はじめから嘘だと分かっているものを発表するのは良くない、と日高さんは怒られた。それに対して日高さんはこう答えた。人間どんな意味であれ、きちんとした筋道がつくとそれを信じ込んでしまうということが面白かったので、そのことを笑ってやりたいと思って出したのです。私たちは滑稽な動物だと示したかったのです、と。人間は理屈が通ると実証されなくとも信じる性質がある。だから弁護士が有罪を無罪にすることもある。とてもユーモアのある話だと思った。 2012/04/28